保険会社から自賠責基準満額で計算した示談書が届いてきましたが、妥当ですか?
1 自賠責基準とは
妥当ではない可能性があります。
自賠責基準とは、自賠責保険で支払われる基準になります。
保険の構造は、自賠責保険という公道を走行するうえで法律上加入が義務付けられている最低限の補償を行うための保険と任意保険という自賠責保険で支払い切れない部分を支払うための保険の二層構造になっています。
本来、任意保険会社は自賠責保険で支払い切れない部分を支払うための保険ですが、実際には、自賠責保険で支払われる最低限の補償金額で示談金を提案することがあり、相場より低額であることも少なくありません。
なお、自賠責保険の傷害分の上限は、治療費、休業損害、慰謝料などの合計で120万円であり、慰謝料の計算方式は、治療期間✕4300円または実治療日数✕2✕4300円のうち低い方になります。
2 自賠責基準の慰謝料の計算方式
たとえば、治療期間100日、実治療日数40日であれば、100日✕4300円=43万円>40日✕2✕4300円=34万4000円になりますので、自賠責基準の慰謝料は34万4000円になります。
一方で、治療期間100日、実治療日数60日であれば、100日✕4300円=43万円<60日✕2✕4300円=51万6000円になりますので、自賠責基準の慰謝料は43万円になります。
3 相場と言われる弁護士基準(裁判基準)とは
弁護士基準では、基本的には治療期間を基準に計算しますが、むちうち症で他覚所見のない方の通院について、1か月は19万円、3か月は53万円、4か月は67万円、6か月は89万円が目安になります(民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準)。
先程の2の事例の場合、通院期間100日は3か月(90日)+10日ですので、53万円+14万円(67万円−53万円)÷30日✕10日=57万6667円が弁護士基準の慰謝料になります。
4 示談前に交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切
任意保険会社は、自賠責基準や任意保険基準などで計算した相場より低額な示談金を提案することが多くあります。
示談後では、金額を争うことが基本的にはできないため、とにかく示談前に交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。