交通事故と労災保険
1 労災とは
労働災害とは,労働者の業務上ないし通勤中の負傷・疾病・障害・死亡のことです。
これについてはなんとなくはご存知の方が多いかと思います。
しかし,交通事故と労災となると,これが関連することをご存知ない方も多いようです。
交通事故の被害者は,事故の加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。
通勤中の交通事故や業務中の交通事故である場合には,加害者に対する請求だけでなく,労災保険の請求もできる場合があります。
加害者と労災の両方から受け取れるからといって,受け取る金額が必ずしも増えるわけではありませんが,支払口が増えることになるので,事実上,より賠償を受けやすくはなります。
2 加害者への請求と労災への請求の関係
事故被害者の受けた損害額は,労災保険の適用があってもなくても変わるものではありませんので,同額になります。
しかし,労災保険の適用がある場合,この損害額を加害者に請求することもできれば,労災に請求することもできるようになるのです。
賠償がきちんとなされるのであれば,結果的には同じ金額を受けることになるのだから,あまり意味がないのではないか,と思われるかもしれません。
しかし,現実に賠償がきちんとなされるかというと,必ずしもそうではないため,意味が出てくるのです。
どういうことかといいますと,例えば加害者側保険会社に対して病院や接骨院での治療費や休業損害を求めていたところ,請求どおりには認めてもらえず,一部のみ認定されるというようなことがあります。
このとき,労災に請求を行うと請求どおりの金額が認められ,請求先が2つあったおかげで満足な賠償を受けられるということがあり得るのです。
また,加害者が任意保険会社に加入しておらず,賠償を行うだけの資力がないということがあります。
このような場合,たとえ裁判を行って賠償を命じる判決が出たとしても,お金がない以上は加害者から十分な賠償を受けられないということになりかねません。
そこで,労災に請求を行うことで賠償を受けるという方法が意味をもってくるのです。